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技術革新の先にある5年後10年後の未来を垣間見た/INEVITABLE ja night参加レポート

2017年6月12日(月)に開催されたINEVITABLE ja nightに参加してきました。もうクラウドやAI(人工知能)といった言葉は単なる技術の話ではなく、インフラでありエコシステムとなっているんだと改めて実感しました。まだ先進国のようにスマホを手にとって自由にネットワークにアクセスできていない発展途上国の50億人が続々と参加してくることで、このエコシステムも変化し、そして進化していくのだという話に引き込まれました。

以下、各セッションごとの抜粋と所感です。

 

Part 1《「不可避な未来」x「NEXT 5 BILLION」対談》

ジャーナリストの服部桂氏と「AGRIBUDDY」CEOの北浦健伍氏による対談で、モデレーターは現在様々なスタートアップやベンチャーでパラレルキャリアを実践している小島英揮氏でした。

服部氏はKevin Kelly氏の著作「The Inevitable」を翻訳した方で、いま現実に起きている「不可避な流れ」から未来を読み解くことの重要性を説いていました。Google共同創業者のLarry Page氏は創業4年目の2002年の時点で「2026年にはグーグルの主力プロダクトが検索ではなくAIになるはず」と言っていて、最初期から検索サービスを提供することでAIの改良を進めてきたらしい。

カンボジアで農家をオンラインで繋げたオンライン農業を行っている北浦氏からは、Googleがリーチできていない「地球最後のデータフロンティア」が新興国の農家にあるという話がありました。その数はおよそ25億人。AGRIBUDDYはデータ収集を通じて作業効率化を図ることで、収益機会を増やすことが重要。データを紐付けることが農家の方々との信頼の獲得に繋がっている。

AIや機械学習といったアルゴリズムと、クラウドやTPUに支えられたフォグコンピューティングという基盤がようやく整い、膨大なデータという燃料が手に入ったことで、これまで以上にVRやIoTが発展していくという話もありました。

 

Part 2《Google のプロダクト開発》

Google合同会社で製品開発本部長を務めている徳生裕人氏から、いま取り組んでいる仕事や製品について説明がありました。そもそもGoogleは「世界中の情報を整理して誰もがアクセスできるようにする」というミッションを掲げていて、その実現に向けたプロダクト開発が行われているそうです。

今の若い世代やこれからの10億人は、スマホで初めてネットに接しているデジタルネイティブ世代なので、使い方も考え方も異なっている。そして新興国では通信単価が相対的に高額になるため、こまめにオンオフしたりと独自の使い方が発達しているそうです。そこでGoogleの東京チームがデータ量80%オフ、速度4倍のウェブブラウザを開発したそうですが、その結果としてネット全体のPV数が50%以上増加したらしい。

 

Part 3《IoTAIVRの未来を語るディスカッション》

IoTやM2M用の通信プラットフォームを提供している株式会社ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏、深層学習に特化した株式会社ABEJA代表取締役社長(CEO兼CTO)の岡田陽介氏、InstaVR株式会社代表取締役社長の芳賀洋行氏による、起業した技術者の鼎談。フリーランス(元Google所属)の及川卓也氏がモデレーターとしてディスカッションの舵をとっていました。

ソラコムはIoT/M2M用のSIMカードを提供していますが、通信会社に基地局は借りているものの、そこから先の交換機などは全てクラウド上に構築していてセキュアなネットワークが利用できるらしいです。「モノをネットに繋げてそれがクラウドにアクセスできる」のではなくて、「モノとクラウドを直結させて、そこからセキュアにネット接続できる」という点でこれまでとは根本的に異なる、まさにパラダイムシフトという感じ。

ABEJAは某メディアに「謎の半導体メーカー」と呼ばれたNVIDIAからアジア初・日本初で出資を受けたというのがすごい。10カ国からメンバーが集まり、拠点も日本とシンガポールにあって、大学教員と共同研究もしているので、国や産学の垣根を超えて深層学習分野で最前線を走っている。クラウド上にAIを構築できるプラットフォームを提供しているが、エッジ側に落とし込むことができるそうなので、インターネット接続が必須ではないというのが面白い。今後はフォグコンピューティングの一例として真っ先に思い出しそう。工場とか街で24時間365日稼働し続けるAIを提供しているので、個人単位で提供しているGoogleとはある意味で住み分けができているらしい。

InstaVRは誰でも個人でも簡単にVRを作成できるツールを提供しているのは有名ですが、様々な組織でも使われています。スミソニアン博物館ではバーチャルミュージアム、USDAでは人材の採用と訓練、アメリカ海軍の訓練、国連では難民体験VR、他にもスタンフォード大学やペンシルベニア大学、東北大学などは教育に採用しているとのこと。売上の9割が海外なのは、そもそも代表の芳賀氏はドバイのアプリ開発を一手に引き受けていた経歴の持ち主なので違和感ないですね。

終盤にはモデレーターの及川氏から「まだまだ日本にはスタートアップを買収するようなテック企業が多くないので、皆さんの会社には優秀なスタートアップを買収していってほしい」というコメントがありました。ソラコムでは出資という形でスタートアップや起業家の支援を始めているそうで、既に事業が展開しているものもあるとのこと。

 


(所感)操作されていない生のインプットが特に大切で、これからさらに50億人分のインプットが入り込んでくると、このエコシステム(情報インフラ)がさらに多様化・現実化していくことを感じました。やはり国という単位でユーザーを区切って考えるのは現実的ではなく、例えばGoogleを通じてリーチできる情報か否かという区別しかないですね。急速に変化が進む時代だからこそ基礎の大切さを理解していないと「不可避な流れ」に巻き込まれて見失いそう。実際Googleでは基礎研究もしているし、そうしないと世界的大企業でも生き残ることができない世の中なのだと感じました。技術者と起業家の両要素を持った人材を社会として育成する体制が求められていますが、それこそ【博士人材】なのではないかと感じています。博士と社会の接点を増やす、博士がいるのが当たり前な社会を目指して何が出来るのか、それもまた博士が取り組むべき課題ですね。

(文責・吉野宏志)


 

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